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2018.06.28

2018/06/28   -

  • 2018.06.28
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公衆衛生:医師ゼンメルワイスの悲劇―今日の医療改革への提言

2016/05/24   -

南 和嘉男 講談社 1988
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本書がとりあげるゼンメルワイスは、1800年代末期に産褥熱の予防法を追究し、処置前の手洗いを励行することで実際にその死亡率を下げ、後の世にその重要性を知らしめた人物です。また後半では、虫垂炎の早期診断・手術を訴えたマーフィーについても紹介されています。

著者がゼンメルワイスの熱心なファンであったためか、最近のトンデモ医療推進者による記載を読むのにも似た読後感を覚えます。しかし、彼らとゼンメルワイスとが違うのは、疫学的にきっちりと調べ上げ、明確な根拠を以て主張したことでしょう。
ゼンメルワイスにしろ、存命中から十分な評価を受けたとは言い難く、必ずしもここに正解例があるというわけではありませんが、新しい概念を打ち出す際にどうするべきなのかを考えるために、本書が良い材料になることと思われます。

副題に「医療改革への提言」と添えており、後半の考察部位では、改革を受け入れられない理由として、体制集団が既得権を守ろうとする卑しい心根を挙げています。しかし、はたして今の時代・条件でもそれだけで説明がつくかどうか、読者個々人がさらに考察する必要があるでしょう。(kimu)

公衆衛生:エピデミック

2016/05/24   -

川端裕人 角川書店 2007(文庫2009年)
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この小説が特に知られるようになったのは、2009年のH1N1インフルエンザによる騒動のあたりからでしょう。それ以前に著された作品であるにも関わらず、感染者やそれに近しい関係にある人々への差別、感染発覚を恐れるための受診控え、マスクの不足などなど、原因や病態が定かでない疾患が発生した場合に起こりうるであろう事態を、作中にて見事に描き出しています。そうした予見性から有名になった本書ですが、必ずしもインフルエンザパニックだけに焦点をあてているわけではありません。

未知の感染症が発生したときに、いかにしてその疾患を定義し、原因や感染経路を探り、その感染を生む“元栓”を閉めるのか。それには病原体も生態系の一部として眺める必要があり、感染症というものに対抗する際の獣医学の意義が、獣医師である準主役の疫学フィールドワーカーの存在を通じ、作品全体から伝わってきます。また、それと同時に、学術的な概念やその必要性、用途などについても平易な言葉で盛り込まれ、わかりやすく理解できるようになっており、獣医学に従事する者が読んでおくべき疫学の入門書とも言えます。

いろいろな伏線をつなぎ合わせるためか、不意に主語が替わり、その把握に困難を覚える点もありますが、小説としても十分に楽しみながら読めるでしょう。(kimu)

公衆衛生:感染地図―歴史を変えた未知の病原体

2016/05/24   -

スティーヴン・ジョンソン 河出書房新社 2007
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本書は、1800年代半ばにロンドンで発生したコレラ禍において、いかに人々がその疫病に立ち向かい、都市としての機能や安全を維持してきたのかを述べた、ある種のドキュメンタリーです。

この中心人物のひとりであるジョン・スノー医師の活躍は、疫学の先見事例として教科書でもよく取り上げられており、感染による死者の分布から感染源を探り当てたということで、彼の作成した感染地図はよく知られています。しかし、記述統計から感染地図を描いたことは彼の功績の一部でしかなく、未だコレラ菌の存在が(彼を含め学術界全般に)認知されていない中で、当時趨勢を誇っていた瘴気説を否定して「水」への注意を喚起した点こそが真に重要である――ということが、本書では丁寧に述べられています。
そして、人口の集中する都市の意味を示した上で、視点を現在に転じ、19世紀のロンドン以上に多くの人々が住んでいる現在の都市では、果たしてどのような点を考慮すべきであるのか、ソーシャルメディアが発展した社会における、新たな危機管理のあり方も考察しています。これはごく初期の疫学で原因究明に尽力した人物たちがどのように考え、行動し、解決に至ったのかを学ぶことから、現在における対応にも思いを馳せる、示唆的な試みです(kimu)

公衆衛生:病魔という悪の物語 チフスのメアリ

2016/05/24   -

公衆衛生の考えが未だ発展途上の1900年代はじめにチフスの保菌者(キャリア)となり、周囲への感染被害のために隔離生活を送ることとなった「チフスのメアリー」を紹介する一冊です。稀代の魔女のように扱う例もあるのに対し、本書では冷静に経過が記述されていて読みやすい文体です。
近年でも、新型インフルエンザ(パンデミック H1N1 2009)の感染発覚者に対する厳しい見方が当初あったように、感染者差別は現代にも残る課題です。本書は、私たちがどのように感染症に接するべきかを考えさせる、よいきっかけになるでしょう。(kimu)

公衆衛生:獣医疫学実用ハンドブック

2016/05/24   -

本書はカリフォルニア大学デービス校で疫学を学び、動物衛生研究所で勤務する著者による、実用的な解説書です。分担執筆ではないため言葉の使い分けに齟齬がなく、読みやすい文章になっています。

目次をみてもわかるように、調査にあたって必要となる研究デザインについて1章ずつ丁寧に説明されています。例えば4章の「診断の評価」においては、敏感度(感度)と特異度の数式を挙げるだけではなく、尤度比やROC曲線による評価方法もまじえながら、診断方法の組み合わせ方のような課題に取り組んでいます。他の章でも、論理の道筋の立て方からエクセルの入力方法まで、非常に丁寧な説明があります。

著者の業務上、牛の家畜衛生に関する例が多いですが、犬糸状虫症のような、犬猫で問題となる疾患についても言及されており、家庭動物臨床志向であっても無関係でないことがわかります。このような疫学的な知識は、基礎研究における研究計画の立案にも、Evidence based medicineの概念を理解するのにも不可欠のものですので、多少読み飛ばしながらでも、獣医学生の段階から目を通しておくべき一冊です。(kimu)

公衆衛生:獣医公衆衛生学

2016/05/24   -

獣医師が知っておかなければならない公衆衛生の知識について書かれた教科書。動物だけでなく、ヒトの食中毒等についても書かれています。(酒井)

その他:病院の言葉を分かりやすく―工夫の提案

2016/05/24   -

獣医師に限らず、医療従事者は意図せずして難解な専門用語を用いてしまうことがあります。しかし、そうした専門用語の多くは非専門家である聞き手に正しく伝わらず、悪くすれば無用な誤解さえ生んでしまいます。このような問題に直面し、私たちが執るべき対応について指し示しているのがこの書籍です。
専門用語というものは従来、専門家の間で正確にものごとを伝えるために生み出されたものです。医療用語に対してただ言い換え語を用意するだけでは、その本来の意味を失ってしまう恐れもあり、無条件に受け容れることはできないでしょう。しかし、本書に収められている提案では、単に言い換えるのを善しとするのではなく、用語の一般認識や理解度をもとに類型化し、【日常語で言い換える】【明確に説明する】【重要で新しい概念を普及させる】あるいはまた【心理的負担を軽減する言葉遣いを工夫する】などの方策を示しています。例えば、誤解の多い「ショック」という用語には、まず「血圧が下がり、生命の危険がある状態」であるということを説明する必要性が紹介されており、誤解を生じる原因や関連用語についても触れられています。
本書は、分かりにくい外来語の言い換え提案を出していることで知られる、国立国語研究所の報告をまとめたもので、報告書の一部はウェブサイト上でも一般公開されています。しかし、工夫の提案だけではなく、患者"様"と呼ぶべきかどうかといった、興味深いコラムも随所に散りばめられており、市販本としての評価に耐えるものとなっています。(kimu)

その他:ペット・ロスと獣医療―クライアントへの効果的な支援

2016/05/24   -

この本の特徴は、カウンセラーではなくあくまで獣医師向けに執筆された本であるということです。ペットロスに特に興味のある方でなくとも、臨床を目指す方なら一度は読んでおくべき一冊です。
『The Human-Animal Bond and Grief』という原題に示されるように、もともとは「絆中心の獣医療(Bond-Centered Practice)」を実施することでクライアントの悲嘆も支援していこうという趣旨の本です。最近では石田卓夫先生が「絆中心の獣医療」を新人教育セミナーのテーマに挙げていることに示されるように、これは臨床獣医師であれば知っておかなければならない一般的概念で、この本の中にもどのようにクライアントとコミュニケーションを取って(医学でいう)医師-患者関係を形成するか、安楽死の手順をどうするか、スタッフの側のストレスをどう扱うかなど実践的な内容が含まれています。また、きちんと文献を紹介している数少ない学術的な本で、ペットロスの研究者にとっても重要な参考文献のひとつです。
多くの会話例などもあり比較的わかりやすいのですが、アメリカの文化における対応について書いている本なので、日本人には違和感を感じる部分がある(例えば、悲しむ飼い主をそっと抱きしめる…など)というのが難点と言えば難点です。(kimu)

原著-The Human-Animal Bond and Grief

皮膚科学:あたらしい皮膚科学

2016/05/24   -

この本は北大医学部の皮膚科教授が書いた人医学書です。それが獣医にそのまま当てはまるわけではないということは忘れてはいけませんが、写真も多くとても評判の良い教科書ですので(著者本人曰く、日本で一番売れている皮膚科の教科書)、獣医領域でも大いに役に立つと思われます。
人医領域であるにも関わらず、この教科書が紹介に値するだけの大きな理由がひとつあります。この教科書はなんと、著者の厚意によりウェブ上に全編フリーで公開されているのです(直リンク)。役目に適うかわからない人医領域の本を買うのはリスキーですが、無料ですので、とりあえず見てみても良いのではないでしょうか。ウェブ版ではマクロの写真は見られないようですが、組織写真は見られますので、じゅうぶんでしょう。なお、この教科書には英語版もあり、そちらもフリーで公開されています。(kimu)