臨床獣医学 書評
その他:病院の言葉を分かりやすく―工夫の提案
2016/05/24
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専門用語というものは従来、専門家の間で正確にものごとを伝えるために生み出されたものです。医療用語に対してただ言い換え語を用意するだけでは、その本来の意味を失ってしまう恐れもあり、無条件に受け容れることはできないでしょう。しかし、本書に収められている提案では、単に言い換えるのを善しとするのではなく、用語の一般認識や理解度をもとに類型化し、【日常語で言い換える】【明確に説明する】【重要で新しい概念を普及させる】あるいはまた【心理的負担を軽減する言葉遣いを工夫する】などの方策を示しています。例えば、誤解の多い「ショック」という用語には、まず「血圧が下がり、生命の危険がある状態」であるということを説明する必要性が紹介されており、誤解を生じる原因や関連用語についても触れられています。
本書は、分かりにくい外来語の言い換え提案を出していることで知られる、国立国語研究所の報告をまとめたもので、報告書の一部はウェブサイト上でも一般公開されています。しかし、工夫の提案だけではなく、患者"様"と呼ぶべきかどうかといった、興味深いコラムも随所に散りばめられており、市販本としての評価に耐えるものとなっています。(kimu)
その他:ペット・ロスと獣医療―クライアントへの効果的な支援
2016/05/24
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この本の特徴は、カウンセラーではなくあくまで獣医師向けに執筆された本であるということです。ペットロスに特に興味のある方でなくとも、臨床を目指す方なら一度は読んでおくべき一冊です。
『The Human-Animal Bond and Grief』という原題に示されるように、もともとは「絆中心の獣医療(Bond-Centered Practice)」を実施することでクライアントの悲嘆も支援していこうという趣旨の本です。最近では石田卓夫先生が「絆中心の獣医療」を新人教育セミナーのテーマに挙げていることに示されるように、これは臨床獣医師であれば知っておかなければならない一般的概念で、この本の中にもどのようにクライアントとコミュニケーションを取って(医学でいう)医師-患者関係を形成するか、安楽死の手順をどうするか、スタッフの側のストレスをどう扱うかなど実践的な内容が含まれています。また、きちんと文献を紹介している数少ない学術的な本で、ペットロスの研究者にとっても重要な参考文献のひとつです。
多くの会話例などもあり比較的わかりやすいのですが、アメリカの文化における対応について書いている本なので、日本人には違和感を感じる部分がある(例えば、悲しむ飼い主をそっと抱きしめる…など)というのが難点と言えば難点です。(kimu)
皮膚科学:あたらしい皮膚科学
2016/05/24
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人医領域であるにも関わらず、この教科書が紹介に値するだけの大きな理由がひとつあります。この教科書はなんと、著者の厚意によりウェブ上に全編フリーで公開されているのです(直リンク)。役目に適うかわからない人医領域の本を買うのはリスキーですが、無料ですので、とりあえず見てみても良いのではないでしょうか。ウェブ版ではマクロの写真は見られないようですが、組織写真は見られますので、じゅうぶんでしょう。なお、この教科書には英語版もあり、そちらもフリーで公開されています。(kimu)
外科学新しい創傷治療-「消毒とガーゼ」の撲滅を目指して-
2016/05/24
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神経学:BSAVA Manual of Canine and Feline Neurology Third edition
2016/05/24
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第二版まではぱっとしない本でしたが、第三版はどうしたことか、オールカラーで写真の質が良くなっており、わかりやすい図も大幅に増えました。まるで別の本です。神経のことをやや薄めに広くまとめてあり、大体の神経に関する事項はこの本に網羅されています。もっと詳しく知りたければ、雑誌の特集や成書をご覧下さい、というレベルです。神経学、CT/MRIをやりたい人にはオススメです。かなり高価ですが、一冊あるとかなり重宝します(Y)。
内分泌学:犬と猫の内分泌疾患ハンドブック
2016/05/24
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腫瘍学:WITHROW AND MACEWEN'S SMALL ANIMAL CLINICAL ONCOLOGY
2016/05/24
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犬猫の腫瘍の教科書です。腫瘍化とは、診断、治療、各論が全編カラーで非常に分かりやすく書かれています。最新のEvidenceも掲載されており、腫瘍学Basicは十分に固められます。病理教室の学生さん達は、Biopsy、Necropsyで組織診断した腫瘍をこれで調べる、という事を平行してやっていくとより理解が深まると思います。学生中に腫瘍の勉強は必須ではないですが、興味がある方は是非一読することをお勧めします。米国獣医腫瘍専門医の小林哲也先生お勧めの1冊です。(FU)
管理人も紹介しようと思っていた一冊です。学部学生の間でも、参考書としては十分使えます。最近第四版が出版され、より最新の知識が得られるようになりました。(酒井)
診断がついた腫瘍に対してアプローチをかける場合に眺めているのがこの本です。それぞれの腫瘍ごとに総合的な情報が記載されており、「中皮腫の犬が来院したけど、先生はどうやって攻めてくつもりだろう?」という時にまとまった情報を得やすいと思います。(KA)
放射線学:Textbook of Veterinary Diagnostic Radiology
2016/05/24
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5版:獣医放射線診断のスタンダードな教科書。amazonでの評価も高く、Pennsylvania大学の教科書リストにも挙げられています。大動物、小動物ともに写真入りで、自分の理解度を測れる問題もついています。
残念ながら、私はあまり読んだことがないのですが、じっくりと読めばかなりの知識が得られそうな内容でした。誰か他の方のコメントをお待ちしております。(酒井)
6版:獣医放射線学の教科書です.第1部は放射線とは何かという話から始まり,続いてレントゲン・超音波・CT・MRIの原理の説明,画像診断のイントロがあります.第2部からは犬・猫・馬の軸性骨格・付属骨格・胸腔内臓器・腹腔内臓器の読影について説明がなされています.写真・図がとても豊富で,英語も平易です.まだ全てを読んだわけではないのですが,説明もわかりやすいという印象を受けました.
ネット上のサービスである“evolve”では本書に記載されている写真を閲覧できるほか,“chapter quiz”などもあり,このサービスを併せてフル活用すれば,かなり理解が深まると思います.(NaO)
放射線学:Radiographic Interpretation for Small Animal Clinician
2016/05/24
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よく見られるX線写真をイラストにした本。初めての読影を学ぶには良いかと思います。
しかし、イラストのみで写真がないこと、イヌネコに限られていること、放射線物理学に関する記述があまりないこと、などが欠点です。あくまで入門書として読むのが良いかと思います。(酒井)
外科学:標準外科学
2016/05/24
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ちなみに、標準シリーズには外科学の他にも、整形外科や脳外科あるいは眼科までさまざまな科があります。(酒井)