2018年獣医な10大ニュース

2018年も、岡山理科大獣医学部が開学したほか、大阪府立大・市立大、岐阜大・名古屋大、帯広畜産大・小樽商科大・北見工業大などで法人統合の、岐阜大・鳥取大の共同大学院が認可されるなど、教育環境に大きな動きがありました。
それらを抜いた中から、1年間でインパクトの大きかった獣医な10大ニュースをピックアップし、概要とともに紹介いたします。なお、以下の紹介順は、動物種や地域等を参考に並べたもので(つまり毎日ニュース紹介している順にほぼ準じます)、重要性などではありません。

①広島ピースウィンズ・ジャパン書類送検

ふるさと納税に採用され、広島県の愛護センターから引き受けた犬を管理していたNPO法人ですが、狂犬病予防法違反と県動物愛護管理条例違反の疑いなど、管理上の問題により代表ら5名が書類送検されました。

②猫から感染したCorynebacterium ulceransで死亡例

餌を与えていた猫からC.ulceransに感染したとみられる高齢女性が、2016年に死亡していたことが報告されました。ジフテリア毒素を産生するようになった株が存在しており、これまでにも感染例は複数ありましたが、注意喚起ということで厚労省から情報提供が為されたものです。

③奄美のノネコ対策で殺処分もやむを得ず、議論まきおこす

世界自然遺産登録を目指す奄美大島ですが、島内に持ち込まれたノネコ・野良猫により、希少な在来種が捕食されている問題が指摘されています。これまでTNR活動も行われてきましたものの、十分な対策とならない見込みが高いことから、保護後に引き取り手がなければ殺処分することも含めた10カ年計画が開始されました。情報共有のためのシンポジウムなども複数催されていますが、これに対して異議を唱える愛護団体が、独自に島内に施設をつくりTNRを行うなど、議論をまきおこしています。

④捕鯨拡大を認められずIWC離脱、7月から近海で商業捕鯨計画

日本政府は資源回復を理由に国際捕鯨委員会(IWC)に商業捕鯨再開を提案しましたが、それが否決されたことに対し、「機能不全」と指摘し、脱退することを閣議決定しました。今後は脱退手続きの完了する7月から、領海および排他的経済水域で、30年ぶりに商業捕鯨を再開する方針です。
日本が主たる国際機関から脱退するのは、概ね85年前に国際連盟から抜けて以来あまり例がないとのことで、国際協調の観点から外交への影響も懸念されています。

⑤北海道地震により畜産・酪農にも甚大な被害

9月6日の北海道胆振東部地震では、大規模な停電も発生するほか、断水や畜舎の倒壊など、農林水産業にも多大な被害をもたらしました。12月時点での被害額は、農林水産全体では1143億円にのぼり、うち畜産・酪農関係では家畜53万頭・羽(0.9億円)、生乳等の畜産物2.3万t(23.6億円)、畜産用施設294件(11.4億円)とされています。今後の停電対策として、発電機の購入が検討されるなどしています。

⑥岩手競馬で相次ぎ禁止薬物、事件性も

7月以降、岩手競馬で出走していた馬から、禁止薬物である筋肉増強剤ボルデノンが検出される事件が続き、年末にも5件目が発生しました。全頭検査を経てもなお相次いでいることから、岩手競馬に被害をもたらすための故意の犯行と見られています。
岩手県競馬組合は単年度収支で赤字にならない条件で融資を受けており、休止期間が長引けば存続が危ぶまれますが、黒字は確保できる見込みです。

⑦岐阜から豚コレラ発生、26年ぶり

9月の岐阜の養豚農場を皮切りに、飼育豚や野生イノシシなどで豚コレラが発生しています。事例と対応が続いているために、防疫従事者の過重労働も懸念事項となっています。
ワクチンの使用後1年間はOIEに清浄国として認められないため、現在まで国として接種中止とされています。しかし、感染拡大の止まる様子が見られないことから、農水省ではイノシシ用ワクチンの使用も検討しているようです。

⑧コイヘルペス隠蔽で全国初の書類送検

コイヘルペスは例年、2桁から3桁件の発生がありますが、2018年も相当数が認められています。新潟の事例では、感染を知りながら県知事に届け出なかった養鯉業の男性が書類送検されました。持続的養殖生産確保法の違反容疑ですが、この法律により摘発されるのは全国初でした。

⑨中国でアフリカ豚コレラ拡大

8月に中国で初めてアフリカ豚コレラの発生が確認され、いまだ拡大を続けています。本疾患は家畜伝染病予防法で法定伝染病として指定され、日本への侵入に注意が払われています。しかし、検疫により水際で止められたものの、中国からの旅行客が所持していた肉類でウイルスが確認されるなど、国内に持ち込まれた事例も既に存在しており、さらなる警戒が必要となっています。

⑩中国で狂犬病ワクチン不正製造 罰金1480億円

中国では毎年、1900名前後が狂犬病により死亡していると考えられていますが、中国の製薬大手である長春長生で、狂犬病ワクチンの製造記録が改ざんされていることが明らかとなりました。生産停止命令が出され、該当のワクチンは市場に出回っていないとされているものの、会長ら15名が逮捕、役人10数名が解雇される事態となり、その後およそ1480億円の罰金・資産差し押さえが命じられました。

2019/01/01