公衆衛生:獣医疫学実用ハンドブック

本書はカリフォルニア大学デービス校で疫学を学び、動物衛生研究所で勤務する著者による、実用的な解説書です。分担執筆ではないため言葉の使い分けに齟齬がなく、読みやすい文章になっています。

目次をみてもわかるように、調査にあたって必要となる研究デザインについて1章ずつ丁寧に説明されています。例えば4章の「診断の評価」においては、敏感度(感度)と特異度の数式を挙げるだけではなく、尤度比やROC曲線による評価方法もまじえながら、診断方法の組み合わせ方のような課題に取り組んでいます。他の章でも、論理の道筋の立て方からエクセルの入力方法まで、非常に丁寧な説明があります。

著者の業務上、牛の家畜衛生に関する例が多いですが、犬糸状虫症のような、犬猫で問題となる疾患についても言及されており、家庭動物臨床志向であっても無関係でないことがわかります。このような疫学的な知識は、基礎研究における研究計画の立案にも、Evidence based medicineの概念を理解するのにも不可欠のものですので、多少読み飛ばしながらでも、獣医学生の段階から目を通しておくべき一冊です。(kimu)

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