その他:病院の言葉を分かりやすく―工夫の提案

獣医師に限らず、医療従事者は意図せずして難解な専門用語を用いてしまうことがあります。しかし、そうした専門用語の多くは非専門家である聞き手に正しく伝わらず、悪くすれば無用な誤解さえ生んでしまいます。このような問題に直面し、私たちが執るべき対応について指し示しているのがこの書籍です。
専門用語というものは従来、専門家の間で正確にものごとを伝えるために生み出されたものです。医療用語に対してただ言い換え語を用意するだけでは、その本来の意味を失ってしまう恐れもあり、無条件に受け容れることはできないでしょう。しかし、本書に収められている提案では、単に言い換えるのを善しとするのではなく、用語の一般認識や理解度をもとに類型化し、【日常語で言い換える】【明確に説明する】【重要で新しい概念を普及させる】あるいはまた【心理的負担を軽減する言葉遣いを工夫する】などの方策を示しています。例えば、誤解の多い「ショック」という用語には、まず「血圧が下がり、生命の危険がある状態」であるということを説明する必要性が紹介されており、誤解を生じる原因や関連用語についても触れられています。
本書は、分かりにくい外来語の言い換え提案を出していることで知られる、国立国語研究所の報告をまとめたもので、報告書の一部はウェブサイト上でも一般公開されています。しかし、工夫の提案だけではなく、患者"様"と呼ぶべきかどうかといった、興味深いコラムも随所に散りばめられており、市販本としての評価に耐えるものとなっています。(kimu)

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