その他:ペット・ロスと獣医療―クライアントへの効果的な支援

この本の特徴は、カウンセラーではなくあくまで獣医師向けに執筆された本であるということです。ペットロスに特に興味のある方でなくとも、臨床を目指す方なら一度は読んでおくべき一冊です。
『The Human-Animal Bond and Grief』という原題に示されるように、もともとは「絆中心の獣医療(Bond-Centered Practice)」を実施することでクライアントの悲嘆も支援していこうという趣旨の本です。最近では石田卓夫先生が「絆中心の獣医療」を新人教育セミナーのテーマに挙げていることに示されるように、これは臨床獣医師であれば知っておかなければならない一般的概念で、この本の中にもどのようにクライアントとコミュニケーションを取って(医学でいう)医師-患者関係を形成するか、安楽死の手順をどうするか、スタッフの側のストレスをどう扱うかなど実践的な内容が含まれています。また、きちんと文献を紹介している数少ない学術的な本で、ペットロスの研究者にとっても重要な参考文献のひとつです。
多くの会話例などもあり比較的わかりやすいのですが、アメリカの文化における対応について書いている本なので、日本人には違和感を感じる部分がある(例えば、悲しむ飼い主をそっと抱きしめる…など)というのが難点と言えば難点です。(kimu)

原著-The Human-Animal Bond and Grief

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