高病原性鳥インフルエンザ(2011)
2011年に国内で発生した高病原性鳥インフルエンザについて、当時まとめた情報です。
高病原性鳥インフルエンザとは何か(簡易まとめ)
そのうち特にH5かH7をもつウイルスは、鳥でも発症する(=病原性をもつ)ので高病原性鳥インフルエンザと呼ばれています(昔は家禽ペストと呼んでいました)。さらに、それが重症化しやすいかどうかで強毒性と弱毒性に分けられています。インフルエンザには動物種ごとに沢山の種類があります。ヒトにはヒトの、馬には馬のインフルエンザというように、基本的には種ごとに決まった種類のウイルス しか感染しません。しかし、濃厚接触した場合など稀に感染してしまう例があり、東南アジアを中心として、高病原性鳥インフルエンザによるヒトの死者が確認 されています(参考:国立感染症研究所)。また、豚はヒトと鳥のインフルエンザにも感染するという特徴をもっています。これらが同時に感染した場合、各ウイルスの遺伝子が混ざり、(例えば)高病原性鳥インフルエンザがヒトにも感染するような性質をもつ可能性があります。
こうしたことから、高病原性鳥インフルエンザが次なるインフルエンザパンデミックの原因になるのではないかと、世界的に懸念されているというわけです。
- 発生状況: 日本における高病原性鳥インフルエンザの確認状況(1/25)(pdf)
- 消毒: アルコール、次亜塩素酸ナトリウム、アルカリ、ホルムアルデヒドなど多くの消毒薬が有効です。
- 検査: 簡易検査→(結果にかかわらず)→確定検査(動物衛生研究所、北海道大学、鳥取大学)
- 法律: 家畜伝染病予防法および政令により、鶏、あひる、うずら、きじ、だちょう、ほろほろ鳥、七面鳥の高病原性鳥インフルエンザは法定伝染病に指定されています。ただの鳥インフルエンザについても、鶏、あひる、七面鳥、うずらでみつかった場合には届出伝染病に該当します。これらを診断あるいは疑った場合には、その獣医師は家畜保健衛生所等を通じて届け出なければいけません。その他の動物種で発生した場合については、家畜伝染病予防法の対象外なので、個別の判断が求められることになります。
Q and A
- Q1. 渡り鳥でみつかったのがどうして怖いの?
- 渡り鳥ということは、国内はもちろん、海を越えて各国に感染が広がるかもしれず、防疫対策が困難です。また、今回はツルの越冬地でも確認されました。多くの鳥が集まるためにウイルスが蔓延しやすいだけでなく、餌づけや観光のために訪れた人々がウイルスを運んでしまう懸念もあります。用事のない方は、そうした鳥の集まるところには立ち入らないようにしてください(参考:環境省-渡り鳥飛来状況調査)。
- Q2. 鶏肉や卵は食べても安全?
- 仮に感染した鶏の肉や卵が出荷されたとしても、それを食べたヒトに感染することはまずないと言われています。報告例が少ないからじゃないかと心配な方は、念のために加熱調理すれば、ウイルスは熱で死んでしまうのでなお安全です(参考-農林水産省)。
- Q3. うちのペットは大丈夫?
- 豚や鳥を飼っている方は、野鳥との接触を避けるようにしてください。犬でも感染例の報告は存在します(ProMED-mail)が、可能性は低いと判断できるでしょう。とはいえ、野鳥からうつる感染症は他にも存在するため、日頃から野鳥との接触を避けるようにしてください。
- Q4. 野鳥の死体をみつけたけど?
- インフルエンザに限らず、野生動物はさまざまな病原体をもっている可能性があるため、素手では触らないようにしてください。多数が死んでいる場合には、触れ たりせずに保健所等に連絡してください。1羽だけの場合には、通常の衰弱死などと考えられます。死体はビニール袋に入れて、しっかり口を締めて一般ゴミと して処分してください(地域によって処理法は異なります)。その際にも、なるべく死体には触れないように、水気を通さないゴム手袋やビニール手袋で防備してください(参考:東京都環境局)。
情報源
国内機関
- 農林水産省-特に「高病原性鳥インフルエンザの発生を防止するためのポイント~養鶏農家・養鶏関係者の皆様へ(pdf)」
- 環境省-特に「野鳥における高病原性鳥インフルエンザに係る都道府県鳥獣行政担当部局等の対応技術マニュアル」
- 動物衛生研究所
- 国立感染症研究所
- 北海道大学大学院獣医学研究科 微生物学教室
- 京都産業大学 鳥インフルエンザ研究センター
- 鳥取大学農学部付属 鳥由来人獣共通感染症疫学研究センター
国際機関
その他
- Wikipedia
- サイエンス・メディア・センター:高病原性鳥インフルエンザ発生に対する専門家コメント
VetCheersから注意
野鳥の餌付けなど、野生動物を集めるような行為は慎みましょう。遠くから野鳥観察する程度で感染するようなことはないと考えられますが、靴底などに付着したウイルスを人が運んでしまう問題もありますので、なるべく避けるようにしてください。発生現場に近づくようなことはもってのほかです。
飼育している動物に感染する可能性も皆無ではありませんので、彼らの安全・衛生にも注意を払い、体調管理に気を払いましょう。きちんと衛生管理することにより、こうした感染が成立する可能性は小さくできます。病気が怖いからと飼育放棄するようなことはないようお願いします。
2016/07/07